きょうみしんしん!
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アンモナイトとは常に勉学ですぞ!
様々なアンモナイトのネットさーふん!すると
アンモナイト.
この名前を聞いたことのない人はまずいないでしょう.
それ以前に,ご存じない方がこのサイトを訪れることもないでしょうが.
しかし,その名前を知っていることと,その生物を知っていることはまったく別の問題です.
・現生のオウムガイに似た,平巻きの殻を持ったタコ・イカに近い生物
・中生代に繁栄し,恐竜と同時に絶滅した生物
いずれも一般に言われているアンモナイトの説明です.
これらは間違ってはいないのですが完全に正しいともいえません。
前掲の文章のどこが正しくないのか,それは以下の長ったらしい文章の中から
ご自分で見つけてください.
それでは,古生物百科5,“アンモナイト”です.
ブ主)わーおなんかイントレスティング!
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最初はいつもどおり,分類上の位置です。
アンモナイトの仲間は分類学上、アンモナイト亜綱(またはアンモノイド類)と呼ばれ、
二枚貝や巻貝、タコやイカ、そしてオウムガイなどの現生生物を含む“軟体動物門”の1グループです.
その中でも特に頭足類と呼ばれるグループに属します.
頭足類の大きな特徴のうち,パッと目に付く特徴としては,
・発達した,明らかにそれと分かる頭部と目を持つ
・多数の足(触腕または触手)を持つ
・漏斗(漫画的なタコのイラストでは口として描かれる)を持つ
・硬質の嘴(カラストンビ)のある口を持つ
などが挙げられます.
頭足類はさらに,大きく三つのグループに分かれます.
オウムガイ,オルソセラス(直角石)などを含む“オウムガイ類Nautiloidea”,
タコ,イカ,絶滅したベレムナイトなどを含む“鞘形類Coleoidea”,
そして,アンモナイトの含まれる,“アンモナイト類Ammonoidea”です(重田,2001).
また,棚部(1998)では,頭足類(頭足綱)をオウムガイ亜綱と新頭足亜綱の二つに大別し,
従来の鞘形類,アンモナイト類は後者に属するとしています.
一見,良く似ているように見えるアンモナイトとオウムガイの殻ですが,
一番最初の殻の形成などを見ると,実は異なり,アンモナイトの殻の形成は,
タコブネやトグロコウイカのような殻を持つタコ・イカの仲間に近いことが分かっています.
この点や,歯舌にある歯の数などから,
アンモナイトはオウムガイよりもむしろ,現生のタコ・イカ類に近いとされています.
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つぎに,アンモナイトの分類と進化史です.進化史については主に重田(2001)の記述に基づいて紹介します.
アンモナイト亜綱は,別名でアンモノイド類と呼ばれます.
これは,狭い意味でのアンモナイト,つまりアンモナイト目Ammonitidaと区別するためです.
実は,普通,アンモナイトとされる狭い意味での“アンモナイト類”は中生代にしかいませんが,
広い意味での“アンモナイト”つまり,アンモノイド類は古生代の頃からいるのです.
それはさておき,アンモナイト“=アンモノイド類”の大分類についてご紹介しましょう.
アンモノイド類は7つの大きなグループ(目)に分けられます.
一番最初に登場したのは古生代シルル紀に出現したバクトリテス目Bactritida.
これはまっすぐの殻を持ったグループで,オウムガイから進化したとされています.
この仲間から進化したアナルセステス(アゴニアタイト)目Anarcestida(Agoniatitida)はまっすぐの殻から
徐々に巻いた殻を獲得し,その後進化してきたゴニアタイト目Goniatitidaでは,
アンモナイトに一般的な,しっかりと密に巻いた平巻きの殻を持ちます.
アナルセステス目はデボン紀末に絶滅しますが,ゴニアタイト目はペルム期末まで
記録があります.この仲間からはクリメニア目Crymeniida,プロレカニテス目Prolecanitidaが派生しますが,
クリメニア目は早々に途絶えます.
しかし,プロレカニテス目からはセラタイト目Ceratitidaが派生,この中から遂に
本命たるアンモナイト目Ammonitidaが出現します.
実は,この“目”というレベルで見ると,古生代に出現したのが6目,
中生代には三畳紀までこそ3目(生き残りが2目)いますがそれも初期に1目が消え,
残ったセラタイト目も三畳紀末まで粘りますがこれまた絶滅,栄華を誇った中生代白亜紀には
アンモナイト目1目しかいないのです.
普通“アンモナイト”というとアンモナイト目を指すというのは,この点から当然といえるかもしれません.
しかし,では,アンモノイドは中生代より古生代のほうが繁栄していたかというと,当然そうではありません.
分類はあくまでも分類,化石がたくさん見つかるようになるのは中生代,特にジュラ紀以降です.
さて,本命のアンモナイト目です.
この仲間はさらに4つのグループ(亜目)に分けられます.
アンモナイト亜目Ammonitina,アンキロセラス亜目Ancyloceratina,
リトセラス亜目Lytoceratina,フィロセラス亜目Phylloceratinaです.
これらはいずれも白亜紀末まで記録されていますが,リトセラス目,フィロセラス目は
あまり特殊化することはなく,古いタイプの殻の形を最後まで維持しています.
逆に様々なタイプが出現したのがアンキロセラス亜目.
異常巻きアンモナイトと呼ばれるものは,いずれもこのグループに属します.
また,アンモナイト亜目も負けていません.巻きこそ特殊化はしませんでしたが,
トゲを持ったり殻にくびれを持ったりと,様々なデザインを持ち,
世界中の様々な場所から多くの種類が見つかります.
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以上,簡単にアンモナイトの分類,進化史について触れてみました.
では,次にアンモナイト,特にアンモナイト目の特徴について述べて行こうと思います.
しかし,残念ながらアンモナイトの軟体部に関する証拠はあまりありません.
そのため,特徴といってもほとんどが殻に関することになります.
しかしご安心を.アンモナイトの殻は多くの研究者によって調査され,
面白いことがたくさん分かっています.
まず,アンモナイトの殻の特徴といえば何といっても“縫合線suture”です.
背景画像にもありますように,アンモナイトの化石にはよく,このような複雑に入り組んだ
模様が発達します.時々,シダの葉っぱがくっついていると思っている方もおられるようですが,
これもれっきとしたアンモナイトの殻の一部です.
アンモナイトの殻には,オウムガイでも見られるような,内部の仕切り(隔壁=セプタ)が発達します.
この仕切り,アンモナイトでは外側の殻に向かって複雑に曲がっていまして,殻と接する部分では
このような非常に入り組んだ形になっているのです.
このため,日本ではアンモナイトのことを“菊石”と呼んだりもします.
また,このように美しい幾何学的な模様を持つため,販売されている標本ではわざわざ
表面の殻を剥がし,縫合線が見えるように磨いて売っていることも少なくありません.
さらに,このパターンは分類上の重要な特徴にもなります.種類によって異なっている上,
基本的に古い種類ほどパターンが単純で,新しい種類ほど複雑になる傾向があるのです.
古いタイプから順に,ゴニアタイト型,セラタイト型,アンモナイト型なんて呼ぶこともあります.
さて,この縫合線,何でこんなに複雑なんでしょうか?
おそらく,そしてほぼ間違いなく,殻の軽量化と強化がその理由と考えられます.
殻は軽い方が当然動きやすいです.しかし,軽くするために殻を薄くすれば,当然殻は壊れやすくなります.
そこで,薄い素材で頑丈な殻を作るにはどうすれば良いか,
アンモナイトの出した答えは,柱である仕切りとの接点を長く,広範囲に分散させる方法です.
いわば,一枚のケント紙の柱は簡単に折れますが,ダンボールなら,更にトタンのように波打った形の
ダンボールなら更に折れにくくなるのと同じことなのです.
殻全体に広がった縫合線はおそらく,かなりの水圧に耐えることができたでしょう.
現生のオウムガイは一日の間にかなりの深さを移動することが知られていますが,
アンモナイトにも同じような生活をしていたものがいたのかもしれません.
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さて,もう1つの面白い点,それが殻の巻き方です.
普通,アンモナイトは現生オウムガイのように殻を平面状に巻きます.
しかし,アンキロセラス亜目のアンモナイトには,非常に変わった巻き方をするものがいます.
これらは良く,“異常巻きアンモナイト”と呼ばれます.
その代表格は何といってもニッポニテスNipponites .
一見,でたらめに見えるその殻の巻き方は,“異常巻き”の名にふさわしいと思えます.
しかし,最近の研究,しかも日本の研究者によって,その殻の巻き方が異常でもなんでもないことが
明らかにされました(岡本,1984).数式で表現し,CG(コンピュータグラフィックス)でその巻きを再現してしまったのです.
これについては今では結構有名な話ですし,ホームページでの紹介もしばしば見られるので,
ここではあえて触れないでおきます.
……数学的な話を完全に理解しているわけでもないので.
ニッポニテス以外にも変わった巻き方のものがいます.
例えばマリエラMariella ,ツリリテスTurrilites のような巻貝タイプ,
その巻きが緩くほどけたようなハイファントセラスHyphantoceras ,
両者を含むユーボストリコセラスEubostrychoceras ,
まっすぐ伸びて180°反転,を繰り返すポリプチコセラスPolyptychoceras やソレノセラスSolenoceras ,
復古主義?まっすぐ伸びるバキュリテスBaculites ,
他にも最後だけ巻きの向きが逆になるプラビトセラスPravitoceras などなど.
これらの種を見ると,確かに数式で表せるような形はしていますが,
でたらめであるのは変わりないと思われるかもしれません.
しかし,ちゃんとこのような色々な形のバリエーションの中でも守られているルールがあります.
それは,重心と浮心の位置関係,そして殻の口の向きです.
成長するたびに体の向きがころころ変わっていては,生活がままなりません.
成長のどの段階であっても,常にエサをとり,外敵から逃げれるような「動ける姿勢」を
維持していなければならず,そのためには殻の口の角度は常に一定であることが望ましいのです.
少なくとも,ある種の異常巻きのものや,正常巻きのアンモナイトでは,
このことがシミュレーションでほぼ確認されています.
生きていた時の姿勢は,「どのような生活をしていたのか?」という問題を解決するための
非常に重要な情報になるので,この点の解明が,異常巻きアンモナイトの生活を復元する手がかりと
なりえるでしょう.
しかし,「動ける姿勢」というのは,全ての種で常に1つとは限らないかもしれません.
岡本(1999)に掲載された,ポリプチコセラスの復元では,
成長に伴って殻の口の向きは変動していくとされています.
この点に関しては,早川(2003)のような別意見もあり,今後の更なる研究が望まれます.
この他にも,同じ種類の中に2つのタイプがある雌雄二型問題,
カラストンビや,ラペット,ロストラム,トゲに殻の膨らみの違いなど,面白い話はありますが,
それらについてはぜひ,書籍や博物館でご確認ください.
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さて,以上は書籍に全て掲載されている事です.
ここからは,あまり本には出てこないお話,
市場で流通しているアンモナイトについてお話したいと思います.
主な産地としては,モロッコ,マダカスカル,ロシア,ドイツ,イギリス,カナダ,日本などです.
特にモロッコのものは,出現の最初期,デボン紀のものや白亜紀のものまであり,
しかも安価なのでかなりの数が流通しています.
その中には前述のバクトリテス目,ゴニアタイト目のものもあり,
一風変わった原始的なアンモノイドが入手できます.
マダガスカル産は主に白亜紀のもので,ロシア,ヨーロッパ産はジュラ紀の
やや原始的なアンモナイト目のものです.
特にロシア産には黄鉄鉱に置換したきれいなアンモナイトのカッティング標本が
ありますが,黄鉄鉱は空気中の酸素と反応して色がくすんでしまうので,
保存の際には密閉した容器に脱酸素剤などを入れておくのが良いでしょう.
カナダ産のものとしては,殻の二層目の真珠層が保存され,虹色に輝く
アンモライトと通称される美しい標本があります.
しかし,装飾品として尊重されるため,非常に高価です.
日本産のものといえば,ほぼ間違いなく北海道産です.
北海道には白亜紀の海の地層が広範囲に分布し,各地から非常に保存の良い
立体的に保存されたアンモナイトが見つかります.
特に,異常巻きの産地として非常に有名で,日本で名前がつけられた
異常巻きのアンモナイトは少なくありません.
標本商やネットオークションなどでしばしば見ることが出来ます.
しかし,基本的に高価で,妙なプレミアの付くことも少なくないので,
良く知らない方は手を出されない方が良いでしょう.
化石が高価で市場取引されることは,標本が学問の場から遠ざかってしまう点,
盗掘者が増え,産地が荒らされてしまう点からも望ましくありません.
また,そのような標本では産地などの情報が失われていることが多く,
単なるコレクターズアイテムと化してしまう恐れもあります.
ただ,もちろん良心的な,価値の分かっている方が出品されることもあります.
しかし,標本の写真で,どの程度の価値の物か,自分で判断できないと,結局は損をしてしまいます.
確かに売買というのは,中々入手しづらい標本を得るための1つの方法ですが,
単に標本を見るだけでは,化石の魅力や,含まれる情報の,30%も理解はできないでしょう.
研究の場では,どのように,どんな地層から見つかったのか,
また,損傷している標本でも,どの部分がどのように欠損しているのか,
といったことも重要な情報になることが少なくありません.
むしろそのことが,メインといっても良いでしょう.
化石=研究とは言いませんが,そのような面が化石の魅力を引き出すことは
否定しようのない事実ですし,自分の見つけた化石が新たな事実を引き出すなんて
非常にエキサイティングなことだとは思いませんか?
また,同好の士で集まってのディスカッションも盛り上がること必至です.
一人で楽しむなんて勿体無い.